Bloodly Rose Residence カカシは薔薇屋敷に戻るとサスケの姿を探した。 しかし、部屋の数があまりに多い上に鍵が掛かっている部屋も多く、なかなか思うようにサスケを見つけることが出来ない。 古代の騎士の甲冑や武器が展示された部屋や見事な剥製や毛皮が飾られた部屋、そして全盛期の王朝を偲ばせるバロック調の家具・調度が置かれた部屋、数千冊はあろうかという蔵書が置かれた部屋など興味深く、いずれも貴重で値の付けれないような逸品の数々が置かれた部屋がいくつもあった。 しかし、カカシは今それらには目をくれず、サスケの姿を追い求めた。 ある廊下に差し掛かった時、突然後ろから声がした。 「その先はご遠慮下さい。」振り返るとあのキサメが立っていた。 「ああ、、、、。」カカシは昨夜キサメが言っていたことを思い出した。 カカシがわかったというように頷くと「それでは。」そう言って去ろうとしたキサメにカカシは慌てて聞いた。 「サスケを見なかったですか?」 キサメはゆっくりと振り返ると「いいえ。」と答え、去って行った。 カカシはまた不審に思い始めた。 広大な屋敷で部屋は見事に手入れが行き届いている。 しかし、屋敷中を歩いていても出会った人間はあのキサメだけだ。他の召使いや使用人の姿はまったく見えない。 一人でこの屋敷の管理をするのは不可能なはずだ。 カカシは好奇心が沸き起こり、先程禁止された廊下を突き進んだ。 一歩踏み出した瞬間、重々しい空気に包まれた。 それまでと景色は変わらない。造りも調度品も何もかも。 しかし陽が当たらないその廊下の先の渦巻く雰囲気、空気の冷たさ、錆びた鉄のような臭いに思わず身震いした。 カカシは思わず上着の下に忍ばせた短剣に触れた。 慎重に歩き始めた。 暑くなく、寧ろ冷え冷えとしているのに額に汗が浮かぶ。 一つ目の部屋には鍵が閉まっていた。続く数部屋の扉も全て鍵が閉まっている。 ますます重くなるような気配にカカシは大きな溜息を吐いた。「全部“開かずの間”か。。ま、、、何にもないでしょ。」そう自分自身に言い聞かせるように呟いて、元の場所に戻ろうとした。その瞬間、 何かの気配を背後に感じた。 何か、殺気を含んだような気配 カカシはそっと胸に手を遣って短剣の柄を握り、上着の中に手を入れたままさっと振り向いた。 「・・・・・・!?」 が、何者もいない。 しかし、気配を確かに感じた。 カカシは今まで何度も戦に出陣して死地を潜り抜けて来たし、その勇名は今や国内外に轟いている。そのカカシの名声を欲し、決闘を申し込んでくる騎士も数多いる。 未だ無敗 「騎士の中の騎士」と称されている。 今回もそのカカシの高名を聞いて大臣直々に指令が下った。 そのカカシが気配を読み違えるハズはない。 そしてその気配は今までカカシが感じた中でも最も恐ろしく危険な気配だった。 カカシは警戒しながら辺りを見回した。 何の姿も見えない。 しかし、早鐘のように打つ心臓も浮かび上がる汗も浅く途切れる息も一向に引かない。 短剣を握り直して、カカシは廊下の奥に進んだ。 「・・・サスケ!?」 5つ程向こうの扉が少し開き、一瞬サスケの姿が見えた。 サスケの瞳は昨夜のように燃えるような紅だった。一瞬その目に魂を奪われたように呆然とした。 ふいにサスケの姿が扉の中に消えた。 「サスケ!!」カカシは我に返って名を呼ぶと、その扉に向かった。 閉まった扉のドアノブに手を掛けるとギィと軋んだ音がする。そのまま一気に扉を開けた。 その部屋は全てが純白だった。長椅子も天蓋付きのベッドもテーブルにも純白の絹が掛けられており、壁も白く、床も白い絨毯が敷き詰められている。 しかし、部屋の中央に置かれた白い陶磁器の花瓶に活けられている薔薇は深紅でそのコントラストは何かを思い出させた。 昨夜のサスケだ 深い闇の中、白いスーツに横たわる白磁の肌に浮かんだ色は唯一その紅い瞳だった。 その瞳の深さに惹かれ獣のように貪り合った。 カカシは部屋を注意深く見回した。 サスケの姿はない 出入り口は、今自分が入って来た扉しかないし、白いレースの掛かった窓は蝶番が掛けてある。秘密の出入り口らしき物も見当たらない。 「サスケ・・・?」カカシは不審に思いながら名を呼んだ。 バタンッ 突然、後ろの扉が閉まった。 カカシが驚いて振り返ると、サスケが立っていた。 白いシャツに紺色のスラックスは朝のいでたちと変わらなかった。 しかし、目は深紅に燃えており、昨夜のあの妖艶な表情を浮かべて立っていた。 サスケが誘うような笑みを浮かべながらカカシに近付いた。 カカシはその瞳から目を逸らすことが出来ず、動くことも出来なかった。 ゆっくりと近付いて来る。 そしてカカシの目の前で止まると、爪先立ちになりカカシの首に腕を回した。 昨夜の甘い感覚が一気に呼び出される唇 もっと熱く深いキスをしようとカカシがサスケの背中に腕を遣った途端、サスケの身体が消えた。 「・・・!?」 サスケがカカシの前に跪いて、前を寛げていた。 「サスケ・・・?」サスケは下からカカシを見上げると妖しい笑みを浮かべた。 赤いベルベットのような舌で唇をチロリと舐めたサスケにカカシは脈打った。 サスケはカカシを見上げたまま細く白い指をカカシ自身に絡ましてゆっくりとそれを口に含んだ。 「・・あっ。。」カカシは耐え切れずにサスケの頭に手を遣った。 白い室内に熱い吐息と濡れた水音が響いた。 ヴェルベットのような感触の舌で最も敏感な部分を舐められ、カカシの身体はゾクリと粟立った。サスケの舌は裏筋をつっと流れ、先端の括れの部分を這うように動いた。そして先の割れ目に侵入するかのように触れた。 「ん・・・っ。。」思わず漏れた声に下のサスケが笑いを含んだ目で見上げた。 その紅い目に引き込まれそうになる。 サスケはそのままゆっくりと立ち上がり、カカシに体重を掛けた。 そのまま押されるながら後退りするように進んだ先はベッドで、そのまま絡み合うようにドサリと倒れた。 サスケが仰向けのカカシの上に馬乗りになり、ゆっくりと釦を外していく。 そして、脇腹辺りに手を侵入させると次にゆっくりと舌を這わした。カカシの身体は再び粟立った。 決して強くない快感が寄せては引く波のようにゆっくりと身体中に広がっていく。波が高まり、別の波と合わさり、そして更なる快感を引き出していく。 サスケはカカシが敏感に反応する部分を時折強く吸い、その痕を舐めた。 カカシの身体をサスケの肌理細やかな手が撫で付け、そのあいまいな感覚と時折強く吸われる快感が絶妙な刺激となる。 緩やかな快感の上に鋭い快感を重ねられ、更に甘い愛撫が加えられる。 カカシはもどかしさと心地よさの狭間で思わず眉を顰めた。もっと激しい愛撫を加えて欲しい、もっと強い快感が欲しい。「、、、サ・・・スケェ。。」思わず甘えるように名前を呼んだ。 鎖骨にさくりと歯を立てられ、ピリリとした快感に身体が震える。 「・・・あっ。。」カカシは小さな吐息を漏らした。 鎖骨のラインに添ってサスケは歯と舌を使って愛撫を加える。 首筋に到達すると激しく吸い付いた。カカシは思わず「うぁっ・・。」と声を漏らした 。 サスケが笑みを零したようだった。 その表情はあまりに妖艶で冷酷で凄絶だった。 先程、外での聖なる処女のような純真で無垢であどけないサスケとはまるで別人だ。 イヴとマリア ふとそんな思いが過ぎり、サスケのあまりの変貌にカカシは戸惑い始めていた。 「痛ぅっ・・・!?」 突然、サスケがカカシの首筋に歯を立てた。 カカシは途端、身体中がだるくなり深い水底に沈んでいくような感覚に陥った。 目の前が真っ暗になる。 しかし、視覚が奪われたようではなく寧ろ暗闇が心地良かった。あの芳香な薔薇の香りに包まれて身体中をイバラで縛られたような甘く官能的な痺れが身体中に広がっていくような感覚だった。 それはまさに“究極の快感”だった このままサスケに身体の全てを貪って欲しい、命すら吸い取って欲しい、サスケと永遠に一つになれるなら、何だって差し出す・・・ そう思った瞬間に、「ダメだっっ!!」悲痛な叫び声でカカシの意識が一気に引き戻された。 「・・・サスケ?」 カカシが目を開けると先程迄の妖艶なサスケからあの純真無垢なサスケの表情に戻っていた。 震えながら自分の肩を両の手で抱き下唇を強く噛み締めて、苦悶の表情を浮かべている。 肩に食い込む爪は力の入れすぎの為か白くなって、絹のような肌に傷を付けている。唇はあの瑞々しいチェリーのような紅さから紫に変わっており、噛み締める力の強さか少し破れて血が浮かんでいる。 「サスケ!!」あまりに辛そうなサスケの様子にカカシは思わず肩に手を遣った。 途端、「触るなっっ!!」叫んだサスケの表情がみるみると変わっていく。 すっと艶めかしい動きでカカシの肩に頬を寄せて来たサスケはあの情念を纏ったサスケだった。艶を含んだ笑顔で「カカシ・・・。」そう呼び掛けてきた。 目の前で万華鏡のように変わるサスケの表情と態度にカカシは戸惑いを隠せなかった。 まるで、サスケが二人いるような・・・ 呆然とカカシが見守る中、突如サスケが襲いかかるように首筋に噛み付いてきた。 その姿はあの妖艶な雰囲気というより情念に憑かれたかのようだった。 「サスケ!?」痛みに顔し顰めながらサスケの細い身体を引き剥がそうとした。 しかし、その細い身体のどこにこんな力が、というようにカカシから離れない。 そしてカカシはまた噎せ返るような薔薇の香りと、危険で甘い痺れが全身に広がっていった。 サスケをの肩を押していた手の力が抜け、弱々しい抵抗となる。 カカシは遠のいていく意識の中で快楽に沈みそうになった。 と、その瞬間に「カカシ!!!!!」叫び声に再び引き戻された。 重い瞼をいやいや開くとそこにはカカシの短剣が心臓に突き刺さったサスケが震えていた。 「!!??」カカシは慌ててサスケを抱き抱えた。 が、その肩に置いた手が止まった。 「・・・血が・・・・。」 そのカカシの驚嘆に満ちた視線にサスケは目を逸らしながら言った。 「・・・カカシ、、、卿。。ここを・・去って、、、下さい。。」 消え入りそうな細い声だった。 パールのような白い肌も、果実のような紅い唇も、艶やかな黒髪も、完璧に整った顔も昨日、初めて見た時のあの聖なる処女のようなサスケだ。 しかし、心臓にカカシの短剣を突き立てながらもまったく血を流していない。 深々と突き刺さった短剣 なのに血が出ていない。 カカシが声も無く見つめているとサスケは苦悶に満ちた表情で言った。 「お願いです。。カカシ、、卿、、早くここを去って。そして、、ここの事は・・・忘れて下さい。。」 身じろぎすらしないカカシにサスケは唇を噛んだ。 「早く・・・行ってくれっっ!!」 カカシはその声にハっとして、身体を起こしてベッドから降りた。 離れていくカカシにサスケは安心したような、そして寂しそうな表情を一瞬浮かべた。 カカシの頭は真っ白だった。 昨夜からの出来事が走馬燈のように浮かぶ。 酷い嵐。突如現れた謎に包まれた屋敷。奇妙な出来事の数々。 まるでイヴとマリアのような正反対の顔を持つサスケ。 そして、流れない血。 いい知れない恐怖がこみ上げてくる。 そのカカシの表情をサスケは苦しそうに見詰めていた。 カカシは呆然とサスケを眺めていた。 あまりに違う二つの人格が、次々と現れる。 後ずさりしながら、無意識のうちに腰の後ろの剣に手を伸ばしていた。 と、突然その手を止められた。 驚き慌てて振り向くとイタチが立っていた。カカシの手を制するその力は強く、振り解くことが出来ない。 「!!??」カカシの背筋に冷たい物が走った。 が、イタチの力がふいに弱まった。 そしてカカシから離れると二つの人格に喘ぐサスケの元に寄った。 イタチはそのサスケの背中に優しく手を這わすと後ろから抱き締めてカカシに言った。 「早く、、去ってください。。」 「えっ・・・?」 「そして、、ここで見たことは決して口外しないで下さい。」 「・・・・・・。」カカシは言葉を継げない。 「今、、張り巡らしていた結界を解いておきました。今ならこの屋敷から抜けれます。」 「結界・・・!?」 カカシはハっとした。 だからなのか、、今朝ほどこの屋敷に来た道を辿ろうとしてもどうしても抜け出ることが出来なかった。それはなにかの妖しかと訝しんではいたが、、結界が張られていたとは。。 「そして二度とはここに戻らないで下さい。ここのことは忘れてください。」 「しかし。。」 「貴方をこの屋敷に呼び寄せたのは、貴方が受けた密命の為です。」 「!!!!」 カカシは思わず胸に手を遣った。 そこには大臣から受けた密命、“〜の森に巣くう吸血鬼討伐の指令”が書かれた密書を身に付けている。 それは聖水を使って加工した羊皮紙を使っておりインクも聖水から作った特殊なインクで書かれ、聖職者の血で封をされた密書だった。 「その命令を受けたカカシ卿、貴方を私は迎え入れました。」イタチはサスケを見下ろしたままゆっくりと話し出した。 「いかようにして貴方を殺そうか?」芝居がかった口調だった。 「まだ、吸血鬼として覚醒しきれないサスケに崇高なる騎士である貴方の血を吸わせよう!さすればサスケは私をも凌ぐ偉大なヴァンパイアになれる!」 カカシは眼を見開いて、無意識に身構えた。 カカシを見るイタチは燃えるような紅い瞳だった。 イタチはふっと息を吐いた。 「貴方の、、その眼は…。」 「えっ、、。」 「貴方のその眼は、、どうしたのですか?」 カカシはそっと左眼に手を遣った。その眼は通常眼帯をしているがルビーのような紅い瞳が隠されている。 「これは…。」 カカシは昔、ペンシルヴァニアの戦場に派兵された時左眼を射抜かれた。 すぐに教会に運ばれ高名な修道女に手術を施された。 その時に移植されたのがこの紅い眼。 それ以来カカシは尋常ではない洞察眼、物事を映像のように捉え、記憶できる術を身に付け、その名は益々高名になった。 ペンシルヴァニアを去る時、その修道女にその眼球の持ち主のことを聞いたが決して教えてくれなかった。 「これは、、ペンシルヴァニアで以前移植されたものだ。」 「そうですか…。」イタチは息を深く吐いた。 「それは、、その眼は我が一族の物です。」 「!!!!」 「普通のヒト族はその瞳に受け入れられることは決してない。瞳に浸食され死んでしまう。しかし、貴方はその瞳に受け入れられ、しかも能力を使いこなしている。貴方は“ただのヒト族”ではないのですね。」 カカシは呆然と聞いていた。 自分はまったくただの人間で、、この眼を移植されてから力を得たが本当にただの人間であろうと思っていたし、疑ったことはない。 しかし、屋敷に代々受け継がれている一族の興隆を綴るタペストリーに“銀狼”が描かれていた。 幼い頃その“銀狼”を見ている時、今は亡き父親が「この方が我々のご先祖様だ。」と言った。 「ご先祖様…?」 「ああ。我が一族には脈々と気高い血が流れている。しかし、それを決して口外してはいけない。」 そうきつく言われたのをふいに思い出した。 「そうですか、やはり…。」イタチがふいに言った。 「えっ!?」驚くカカシに「読心術です。」と小さく答えた。 「だから、、サスケは貴方に惹かれたのですね。もう私達しか残っていない一族のその眼と、“銀狼”の血。」 「・・・・・・。」 「カカシ卿、ここを出たら二度と私達を探さないで下さい。我はサスケとこの地を去ります。人間と対立するつもりはありません。」 イタチはそっとサスケの額に唇を充てた。 「私はサスケと静かに暮らしたいのです。」 いつの間にかイタチの腕の中のサスケはあの天使のような清らかな少年の表情に戻って、気を失っている。 イタチはそっとサスケを抱き上げた。 そして、ゆっくりカカシの横を通り抜け扉に向かった。 「サスケ・・・!!」カカシは思わず名前を呟いた。 「サスケは、、貴方を愛してしまった。しかし、私達ヴァンパイアに“愛”は不必要なもの。寧ろ人を愛したサスケはこれからヴァンパイアとして生きていけない。いえ、、元々優しすぎるのです、この子は。」 「何処へ、、行くのだ?」 「・・・・・・わかりません。何処か二人で静かに生きれる場所へ。。」 「・・・・・・もう、、お前達の追討部隊が出兵しているはずだ。俺がこの屋敷を見つけた時、パックリアンに密書を持たせた。」 「・・・・・・やはり、、貴方に私の幻惑は効いてなかったのですね。。」イタチはそっと目を伏せた。 「私は完全なヴァンパイアです。しかし、サスケは・・・サスケの母親は人間なのです。。この子を連れて、、逃げ切ることは出来ない。。」 遠くからラッパの音が聞こえる。 進軍のマーチだ。 既に二千の兵がこの屋敷の傍迄来ている。 カカシ直属の精鋭部隊・一般兵士・僧侶・モンスターハンターのその部隊にはいかにヴァンパイアといえども、勝てることはいや逃げ切ることは出来ないだろう。 カカシの目の前に広がった光景は首を刎ねられたイタチの死体と捕らえられたサスケの姿。 カカシの心臓がドクリと鳴った。 突然、イタチに駆け寄るとその腕を掴んだ。 「サスケは俺が守る!!」 大きく見開いたイタチの目。 その目を見ながらカカシはもう一度言った。 「サスケは俺が守る。」 「しかし・・・。」 「サスケは半分人間だ。だから朝の日の光の中でも生きていることが出来るのだろ?」 先程サスケは確かに外を、天が下を歩いていた。 「・・・ええ。。ヴァンパイアの能力は発揮出来ませんし、強い日差しには耐えれませんが。。」 「サスケは俺が助けた人間の少年だ!!」カカシが言った。 「・・・・・・。」 イタチはじっとカカシの眼を見詰めた。 カカシは今はもう逸らすことなくその眼を見返した。 イタチの眼は間違いなく、自分も持っているあの紅い瞳だ。 吸い込まれるような深さと跪きたくなるような美しさと魂が凍るような冷酷さを湛えている。 しかし、 ふと優しい光が見えた気がした。 ほんの一瞬だったが、それは“人間”の瞳に見えた。 イタチは抱きかかえたサスケの額にそっと唇を押し当てた。 暫く眼を閉じてそうしていた。 そして、サスケをカカシにそっと差し出した。 「サスケを、、頼みます。。もし、貴方がサスケを苦しめたり、悲しませたりするようなことがあったら私は貴方を殺しに行きます。」 「そして、もしサスケが一瞬でも私の元に戻りたいと思ったら、私はサスケを迎えに行きます。」 カカシはサスケの細い身体を強く抱き締めた。 「必ず、必ずサスケは守ってみせる。そして、、幸せにする。」 「・・・お願い致します。偉大なる騎士、カカシ卿。」そう言って跪くと、すっと闇に消えた。 カカシはサスケを抱き締めたまま暫く闇を見詰めていた。 カカシは急いで屋敷の外に出た。 もう、軍はそこまで迫っている。 カカシはマントでサスケを身体をくるむと口笛を吹いた。 瞬く間に白い疾風のようにパックリアンが駈けてきた。 カカシはパックリアンに飛び乗ると迫り来る軍隊とは反対方向に駆け出した。 数ヵ月後、都のカカシの屋敷に美しい少年が暮らしているという噂が流れた。 少年はそれは美しい顔で透き通るような白い肌を持ち、薔薇を愛でていた。 そしていつも薔薇のように頬を染め幸せそうに微笑んでいるという。 Fin |
いわく、
当 分 薔 薇 を ま と も に は 見 れ ま せ ん
と仰られたナスターシャ女史ですが
美しき吸血鬼と騎士、
このさながら五月の赤薔薇が
月影に露をいただいて花開くかのような
ロマンティックファンタジー、
ありがとうございました!